企業探訪

企業探訪 vol.048
株式会社仙建(大仙美郷地区会)
貸し切りバスの所有台数は県内第2位、課題を価値へと邁進中
【2018年5月】 ㈱仙建は、現在貸し切りバスの所有台数は32台と秋田県内第2位の保有台数を誇ります。もともとは、土木とダンプ輸送を手掛けてこられた同社がどのような経緯でバス事業を始められたのか。またその成長の要因、今後の展望といったところを佐々木正龍社長にお伺いしてきました。

なぜダンプ輸送からバス事業を始めたのですか?

 昭和45年に父が「仙建興業」として創業し、主に田んぼを掘って土砂利を上げて、山の土を田んぼに埋め戻すという仕事を始めました。平成5年に法人化し、平成6年にはダンプ輸送部門を(有)仙建運輸として独立させ事業を拡大してきました。一時は40台近くダンプを所有するまでになりました。
 しかし徐々に公共工事が減少していく中で、父が新規事業を模索していたとき、平成12年に貸し切りバス事業の規制緩和により事業認可が取得しやすい環境になりました。地元には大手のバス事業者しか無く、「参入するなら今だ!」と考えたのだと思います。福利厚生用に自社でマイクロバスを所有していて、時々レンタルしていたので、潜在的な需要はあると感じていたことも参入決意の大きな要因だと思います。
 それでも最低所有台数の5台のバスを購入して事業を始めるのはかなりの勇気が必要だったと思います。 ただ「仙建(先見)の明」とでもいうのか、営業担当者を採用したところ、学校関係や旅行代理店からの受注がどんどん増え、所有台数も予想以上に増えていきました。平成24年には大仙市からスクールバスの運行を受託してさらに拡大しました。

土木・ダンプからバス参入は社員さんにとっては大変だったのでは?

 弊社のドライバーはみんなダンプの運転と兼務しています。バスを始める前は、ダンプの仕事がない季節は仕事を休んでもらったりして収入が安定せず、社員も会社も大変だったと思います。バスを始めるとダンプの仕事が少ないときもバスを運行して仕事ができるので社員も、会社も安定して仕事が出来るようになると考え、社員に説明して2種免許を取得してもらいました。
 ただお客様を乗せて運行するからには「運転・接客マナー」と「安全に対する意識」の向上が必要です。一朝一夕には向上するはずはありませんので、社員と一緒にどうしたらお客様に「喜んでいただけるか」「選んでいただけるか」を考え、会社全体で取り組んでいます。最近では長野県のスキーバス事故によってバス業界のドライバー不足や高齢化、安全教育の不備が大きく取り上げられました。それに伴い監督官庁からの監査基準や行政処分が大幅に強化されました。
 弊社では昨年、貸し切りバス事業者安全性評価認定制度において「一つ星」を取得することが出来ました。社員みんなが頑張ってくれたおかげだと感謝しています。バスのステッカーも貼付していて、ドライバーも意識して乗務しているようです。ときどきドライバー同士で注意し合う光景を見ると成長が感じられて嬉しくなります。

今後の展望と事業承継についてお聞かせください!

 私は地元の大手建設会社に18年間勤めていました。父の会社に入るつもりはなかったのですが、父から「戻って来い」と言われ平成18年に入社しました。会社にはそれまで17年間父を支えてきてくれた弟がいて、そこに私が入社するのには大きな葛藤がありましたが、弟の理解と協力があって戻ることを決意しました。
 弟は今も私の右腕として会社を支えてくれています。平成20年に代表取締役となり、父は相談役となりましたが平成23年に亡くなりました。
 父の決断の速さや社員を引っ張っていく強いリーダーシップの良いところは今後も引き継ぎながら、もっともっと社員とよく話し合いながら事業を進めていく会社にしていきたいと思います。
 ここ5年ほどで社員を12名採用しましたが、ハローワークではなく社員からの紹介で皆入社しています。会社の条件や環境を弊社の社員が知り合いに話をして誘ってくれていることは嬉しいことですし、有難いと感じています。私には4人の息子がいて長男が現在一緒に仕事をしています。弊社は事業が地元主体ですから、これからもこの地域で雇用を生み出し、みんなに愛される、この地域に必要とされる会社になっていけるよう、弟や息子、社員とよく話し合いながら父から受け継いだ会社をみんなで育てていきたいと思います。

取材を終えて

 「仙建(先見)の明」があると地元で言われる同社。今年50歳の佐々木社長は今後旅行代理店業への参入も視野に入れられているとのこと。人手不足や社員教育の難しさが大きな課題と言われるバス業界で、課題を価値へと転換しようと努力している姿勢は同じ経営者として大変勉強になりました。
 自社の将来ビジョンをしっかり描いて、慌てることなく地に足をつけて、社員と一緒に成長していこうという経営姿勢を強く感じるとともに訪問して取材しないと分からないことがたくさんあると気づきました。
取材・文/大仙美郷地区会 地区会長 近藤哲泰
六郷小型貨物自動車運送㈱代表取締役
会社概要

㈱仙建
〒014-0804 大仙市橋本字中井村299-1-2
TEL:0187-63-1676 FAX:0187-62-3819

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