企業探訪

企業探訪 vol.011
珈音合同会社(男鹿南秋地区会)
この集落で生きるという事「黙っていたら、限界集落…」
【2015年5月号】今月の企業探訪は、男鹿市五里合(いりあい)地域で自家焙煎珈琲専門店を営むこおひい工房 珈音(かのん)(代表の佐藤毅(たけし))さんをご紹介します。世帯数75世帯、約180人が暮らす男鹿市五里合琴川集落に2006年、自家焙煎した珈琲豆の宅配販売を始め、2008年には自宅の隣に念願の喫茶店『こおひい工房 珈音』がオープンしました。 落ち着いた雰囲気のある外観は、温かさ
が感じられ、目の前には田園風景が広がります。店内に入ると佐藤家代々から続く家の柱や梁(4代目)が、とても素敵な趣を醸しだして、出迎えてくれました。おしゃれな暖炉(薪ストーブ)も、お部屋の空間に溶け込んでいて、時間の流れが穏やかに過ぎていくような、癒され感漂う雰囲気です。

こつこつ技術を積み上げていく仕事を生業に

早速、お店を始められたきっかけをお訪ねしてみましたら、大学時代に通った喫茶店がきっかけとなり、そこでコーヒーに興味を持ち始めたとのことでした。人と話すことが上手な方ではない…と、人と競う仕事より、こつこつ技術を積み上げていくコーヒー焙煎の仕事が自分には向いていると、生まれ育ったこの土地で店を始める事を決意したとのことでした。 過疎の進む集落でなぜ?との問いに「生まれ育ったこの環境が好きでここで生業を持ち生活をしたかった。この集落には自然の宝庫が沢山ある。そういった資源を活かし少しでもこの地域のためになったらと思う。他の土地でやろうなどとは思えな
かった」と。この地域でなくてはとのこだわりが伝わってきました。

ホタルが生息する地域を大事にしたい

ここ五里合琴川集落は、『琴川ホタル』が生息する自然豊かな地域です。毎年7月、ホタルが出る時期は、店の照明を落とし、蝋燭の明かりを灯して『ホタルカフェ』(夜間営業)をしています。2011年から始められ、毎年幻想的な風景を見に遠方からもお客様がいらっしゃるそうです。佐藤さんは、「ホタルがまだ生息するということは、水も綺麗で自然豊かな土地ということ、それはここの集落の農家の皆さんが環境に配慮した米づくりをして下さるからこそ」と言います。「今年、(2014年)米価の値段が下がり、TPP問題も懸念される。苦労した分、米の価格に転嫁されなくなると、従来の米作りが可能なのか、ホタルの生息にも関わる事」と険しい表情で語って下さいました。あえてこの集落に生きていく意義を伺えた一面でもありました。

何事もおごることなく 日々研鑚

部屋の一角に飾られていた大きなコントラバスは、佐藤さんが大学時代から始められた愛用楽器。コントラバス奏者として、県内各地で演奏会を開催したり、様々なイベントにお招きされたりと活躍されています。10年以上経った現在でも、「コーヒー焙煎もコントラバスの演奏もコツコツと積み重ねが大事」と、謙遜しながらお話して下さいました。そして「コントラバスの演奏に没頭してしまうとコーヒーの焙煎がおろそかになってしまう」と地道に職人肌を覗かせました。(佐藤さんらしいです)お店には、男鹿市内で活躍されている陶芸家の方とも連携していらっしゃるようで珈音さんの珈琲を使った釉薬でできた器の展示会を行ったり、喫茶でもその器を使われたりしています。また、会員企業のグルメストアフクシマさん手作りカレーがランチメニューの看板にもなっていて、とても好評だとの事です。志を同じくする仲間たちとの活動を大事に連携も図りながら、頑張っている姿が感じられました。

店主のお人柄がお店のイメージをつくる

一緒にお店で働いていた方に、「どんなお店ですか?」との問いに「優しい方達が集まるお店です」と笑顔でお答え下さいました。佐藤さんのお人柄がお店のイメージをつくっているのだと実感しました。 佐藤さんが奏でるコントラバスの音色を聴きながら、ホタルが放つ光の風景を見る事が出来たのなら、どんなに素敵だろうと思いながら岐路につきました。
取材・文/福島智哉
㈲福島肉店 専務取締役
会社概要

珈音合同会社
〒010-0352 秋田県男鹿市五里合琴川字前田109
Tel:0185-34-2470
■ホームページ:http://www.kanon-coff ee.com/

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