企業探訪

企業探訪 vol.019
有限会社ライスロッヂ大潟(男鹿南秋地区会)
『俺たちの未来は新しい市場を開拓してこそ!』
【2016年1月号】今回の企業探訪は、男鹿南秋地区会員の大潟村で農業を営む㈲ライスロッヂ大潟の黒瀬友基社長をクローズアップしました。黒瀬社長は、大潟村の最後の入植者(第5次入植昭和49年)の2代目です。大学を卒業後、都内のIT企業でマーケティングの仕事に携わったのち、10年前の2005年、28歳の時、奥様とお子さんと共に帰郷し農業に従事しました。農業を継ぐことにためらいはなく、むしろ、『個人のお客様にお米を販売』することに魅力を抱き、更に充実させたいという思いが強かったそうです。今、米を取り巻く環境は以前にも増して大きく変わろうとしています。これからの農業、そして社会を担っていく若い世代がどのような展望を抱き挑戦しようとしているのか…、12月地区例会の報告の内容を交えてご紹介したいと思います。

業界的には厳しい環境であるが…

一人あたりの年間の米の消費量は、1965年( 昭和40年) 頃には約120kg あったものが、現在では約半分。世代別の主食の割合を見ても、1981年( 昭和56年) は米が1位だったものが、2010年( 平成22年) には、ほぼすべての世代でパンへの支出が1位になっています。また、お米の消費量のうち自宅でお米を炊く割合も半分以下に減っており、つまり一人あたりの米の消費量は減り、さらに家では米を炊かなくなっているのです。我が社は「米を作り個人のお宅に届ける」という、まさにその先細っていくマーケットを相手に商売をしています。そういう現状の中で、果たして今、生業としている米の個人向け販売に未来はないのか…?

確実に稼げる市場で農業をする!

 しかし、ここでもう一つの観点で考えてみると、日本国内の総需要700̃800万トンに対して、自社のシェアはわずか0.0012% と、市場全体から見ると微々たる規模です。そう考えると、市場動向を重視しすぎることなく、自分達のやりたいこと、やるべきことをきちんとやっていくことが大事だと改め
て思います。自分がどういった農業をしていきたいのかを考えて、小さくてもニッチな市場で確実に稼げる農業をやっていくべきだと思うのです。

今までやってきたことをやり続けるために
 

 米の個人宅配に於いての自社の強みは、売上の半分以上が直販でお客様と結びついているということ。さらに長年お付き合いもあるお客様も含め1500名以上の顧客がいるということ。そして30年間で蓄積された受注、決済、運送、梱包、精米などの個人宅配の運用の仕組みがあると思います。
 一方で、私の信念はやはり、『米作りが好き』。そして『個人のお客さんを相手にする商売が好き』だということです。この強みとやりたいことを考えると、今迄もやってきた『安心安全なお米を個人の客様に届ける』ことが私たちやるべきことではないかと改めて思います。

新しい市場は今の市場の中に

 しかし、時代の変化に伴い、お客様やマーケットも変わっています。したがって新しい市場を開拓するというのは、新しい業態に変化する事ではなく、今までの「個人のお客さんにお米を届ける」ということを、『今の市場やお客様に対応して新しい手段や方法で行っていくこと』なのではないかと思います。

ターゲットとコンセプトを明確にして

そこで、新しい手段や方法を考える上で、ターゲットやコンセプトを再定義しました。具体的なターゲットは、30代の妊娠子育て開始世代。妊娠子育ては食の安心安全を考える転換点となり、30代から安全志向が高まることはデータでも裏付けられています。 また、コンセプトは、『第二のふるさと、親戚と思ってもらえるような関係性』。「安心安全なお米を届ける」だけなら、デパートなどでもできますが、農家だからこそできることとして関係性を重視したいと考えました。ちなみに、ライスロッヂの社名ですが、お米を購入されているお客様であれば、いつでも来村して田んぼを見たり、秋田観光のために滞在できる部屋(ロッヂ)を用意していることに由来します。 このようにターゲットとコンセプトを明確にした上で、新しいお客様を開拓して関係性を深めていくことで、最終的に親戚的な関係を持ったお客様を増やせていきたいと思っています。

農家も情報の見える化で次のステップへ

今後、現状の購入理由やリピート率などの顧客分析を大学との協力で行っていきたいと考えている所です。また、事務作業のマニュアル化や効率化により、お客様と向き合う時間を今まで異常に多く取りたいと考えています。 このようなマニュアル化や見える化などは、これまでの農家には不得意分野です。しかし、農家の立場で普通の会社の様に出来れば、農業界の強みにも至ることであると考えます。

生産者と消費者のかけ橋へ

 生産者と消費者の距離感が離れていく感が否めない現代、何が出来るか考えると、消費者側に対しては、栽培現場の様々な情報をお伝えし生産者側の状況をもっと知ってもらいたい。また生産者側に対しては、自分の生産物の1% でも消費者と直接結びついて販売して欲しい。そのことが出来たら、消費者と生産者の双方が、人間の営みに大切な食について何かを考えられるきっかけに至ると思います。自社の商売だけに留まらず、そういうかけ橋を築くことに関わっていきたいと思います。
取材・文/三浦文枝
秋田県中小企業家同友会 事務局主任
会社概要

有限会社ライスロッヂ大潟
〒010-0445 秋田県南秋田郡大潟村西1-4-7
Tel:TEL:0185-45-3088
FAX:0185-45-2887
栽培作物・面積:水稲(15ha)※個人栽培分

  • e.doyu akita
  • 同友会アプリ DOYU NAVI
  • 企業探訪
  • 中小企業家同友会 就職情報サイト Jobway