企業探訪

企業探訪 vol.009
丸水秋田中央水産株式会社(秋田地区会)
卸売市場は生鮮食料品の流通機構の中核
【2015年3月号】今月の企業探訪は、秋田地区会会員 丸水秋田中央水産株式会社(以下、丸水)です。会員登録は、執行役員 開発室 室長の小松博さんです。丸水さんは、秋田市外旭川の秋田市公設地方卸売市場内で水産物卸売業者として生業をしています。実際、どんな仕事をしているのかよくわからないというご要望にお応えし、お邪魔してきました。
まずはじめに、私たちが食している生鮮水産物はどのようなルートを経て食卓に届くのかを紐解いてもらいました。簡単に説明すると、漁業者である生産者、漁協などの出荷団体、生産者から買付する産地仲買人、などから販売委託された品物を、せり売りや相対取引※1で仲卸業者や売買参加者(買受人という)に販売する役割を担っているのが卸売業者である丸水さん。秋田市の卸売市場の水産卸売業者は丸水さんと他1社のみ。公開・公平な運営規則のもとに卸売業が営まれているとのことです。※1:卸売業者と買受人とが一対一で個別に販売価格の交渉を行う取引形態

卸売市場の役目とはどんなこと?

生鮮食料品等を取り扱う卸売市場は、多数の農林漁業者に対し安定的な販路を提供するとともに、消費者にとっての生鮮食料品の流通機構の中核となるという重要な役割を果たしています。また保存技術が発達していない時代には、入荷した水産物を在庫せずに販売するというシステムは社会的に有効な役割を担ってきました。しかし、保管設備、流通機構や消費環境が常に変化をし、秋田県においての市場取引高は昭和58年をピークに、以後減少をたどり現在は約半分になっているとのことでした

取扱高の減少の要因と県内生産者の状況

平成25年度の水産部の取扱高は、鮮魚・冷凍品・塩干加工品を含めて、前年対比で数量では8%、金額ベースでは7%ダウン。その内鮮魚に関しては、約12% 取扱量と金額がダウンになっています。その要因としては、①人口の減少、②県内経済の低迷、③産直販売の増加(ネット販売含む)、④中央資本のスーパーマーケットの進出 この事が要因で市場経由率が減少しているそうです。 また県内産比率に着目すると鮮魚の県内産比率はわずか20% 弱でしかないという状況。地域の漁業者は事業承継したくても、力仕事のわりには収益構造が悪い。このような理由で漁業者が減ってきているという問題もあるそうです。このまま漁業者が減少すれば、秋田の水産資源を活かすことができなくなるとも語られました

環境の変化の中で、どのような戦略を打ち出して邁進してゆくのか?

ピーク時と比べて売上高は約半減。今までは管理経費の削減や仕入原価の見直し、運賃、保管料等の低減により経営を維持してきましたが、今後は上記で述べた要因によるマーケット縮小・環境の変化で取扱高の減少は否めません。そのため新しいことに取り組まなければならないと次のような2つのビジョンを語られました。①海外に加工場を持っている企業と連携し、原材料を提供する。②六次産業化に取り組み、付加価値を付けた製品を海外も視野に販売する。しかし構想上の段階であり、実現にはクリアしなければならない課題があるようでした。特に②では秋田県沖で取れる鮮魚を対象に加工した場合、鮮魚の種類と漁獲量にばらつきがあるので、多品種小ロットで生産ラインを構築せざるを得ず、手間とお金が余計にかかってしまうということ。秋田県として加工場がなかなか進展しないというのもこのような問題を含んでいるのではないかとのことでした。 また、これからの卸売市場の役割について以下のように語って下さいました。「卸売市場がなくなるということはないと思います。しかし環境の変化に対応し新しいことに取り組まなければ未来はない事も否めません。消費者が何を欲しているのか、ニーズの把握・開拓をして仕入れに反映させてゆくことも必要だと考えています。現在は食の安全・安心に対する消費者ニーズに対応するために、生産から販売に至るまで温度管理の徹底を図り5年ほど前に「低温売場」を新設しました。今後はさらに進めて、荷捌場を改善し、完全な「コールドチェーン化」をめざします。これからも産地と消費者の結び役としてさらなる信頼を確保していくため全力を尽くしたいと思います。」
取材・文/三浦 文枝
秋田県中小企業家同友会 事務局主任

二方 淳介
太陽印刷㈱ 専務取締役
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